1996年は名盤が集まった年
シングル、アルバムの売り上げがピークに達していた1996年。
私はこの時期に名盤と呼ばれるものが集中しているなぁと思ったことがある。
幾つかその代表例を挙げてみたいと思う。
- Mr.Children「深海」
- GLAY「BELOVED」
- globe「globe」
- サザンオールスターズ「Young Love」
- スピッツ「インディゴ地平線」
- CHAGE&ASKA「CODE NAME2.SISTER MOON」
- etc...
と、有名バンド、アーティストをあげてもまだエトセトラがあるぐらいに多量に名盤が散りばめられています。
今回は、その中でも私がこの96年の中で思い入れも含めて最高作だと思っている槇原敬之の「UNDERWEAR」を紹介しようと思う。
いつも通り評価は(C~S)、場合によって(+、-)を付ける場合がある。そこはご了承を願いたい。
01.男はつらいっすねぇ
開幕から槇原史上最も、と言っていいほどのロックサウンドで始まる。
中々な男性が共感するような歌詞が今までの槇原らしくない歌詞である。
「ポケットの中でくしゃくしゃになってしまったハンカチでも もしもあの子が泣いてたらしわも伸ばしてるひまはない」という歌詞が好き。
ある意味でタイトルチューン。「今までとは違うことをします」という意味と取れる。また、歌詞に「トランクス」と出ているため下着のことを指してるのだろう。
(A)
02.PENGUIN
イントロから引き込まれるイスニックバラードテイストの音楽。
ファンからも高い人気を誇っている名曲。歌詞は許されない恋を描いた切ない曲である。
兄妹、先生と生徒、高嶺の花、同性愛など様々な解釈がもたらされる。
「今でも時々思い出しては連れ出さなくてよかった事も 愛していたのもホントだと笑ってる」が最高にたまらない。
切なさや主人公に対する痛みなどが取れるまさに名バラードと言える。
(S+)
03.どうしようもない僕に天使が降りてきた
UNDERWEAR唯一の先行シングル曲。しかし今までにやったことのないようなロックサウンドでイントロがはじまる。
歌詞は喧嘩した彼氏が彼女と仲直りするまでの過程を描いた曲である。「誰かを愛するためにはもっと努力が必要」という歌詞は名言である。
アップテンポで爽快なロックな曲が見受けられなかった今までの槇原の曲の中で相当な起爆剤を持つ曲と言えよう。
しかしこの歌詞に出てくる主人公は中々に身勝手であるが、それもこの歌詞の面白い所である。
コンサートで歌うときに白いタオルを回すのは鉄板。
(S)
04.君の自転車
さわやかなポップナンバー。開幕の槇原自身が言う「ハイッ!」に一気に引き込まれる。
歌詞は前の曲と同様に、喧嘩した主人公が恋人に仲直りをしようとまで行く曲。
「何気ない振りするためにサンダル履いて行こう」の歌詞が好きである。
結果的にこの2人は仲直りできたかどうかは分からないが、直ぐに出て行ったような描写が見えるため、まぁ直ぐに仲直りできたのだろう。
シングルっぽくも見えるため、面白い曲だなぁと思える。
(A+)
05.うん
結婚までの誓いを立てるピアノを基調とした優しいバラードソング。
歌詞は5月を描いている。それぞれが好きと言わずとも、「うん。」というだけで分かり合えるような恋人と出会いたい。そのような思いに駆り立てる素敵な曲、特にCメロは絶品である。結婚ソングとしても違和感がない。
隠れた名曲というのはまさしくこのことである。
またこの曲は2002年に行われた「HOME SWEET HOME」コンサートにおいて初めの曲で弾き語りをした曲でもある。
謹慎後の大勢の前で披露した曲。ただじっと聞いていたい。感動できる。
(S)
06.I need you.(ALBUM VERSION)
「どうしようもない僕に天使が降りてきた」のC/W曲。
アルバムバージョンはしっかりとした曲調。シングルバージョンは少し初々しいキーボードを基調としている。私はアルバムバージョンが好きである。
歌詞は友達であるのか恋人であるのか分からない関係性を描いてる中々にもどかしい曲。
サビの英語は心地がよく「TWO MOONS」を思わせる。
多分この二人の恋みたいなものは終わってしまうのだろう。そんな気がしてしまような曲調が切なくさせてしまう。
(B+)
07.revenge
ダークテイスト溢れるバラードナンバー。最初はピアノのみだがサビに入りギターサウンドが入り激しくなっていく。
歌詞は別れた恋人の未練をたらたらと描いており、正直言ってドン引きである。
特に「タバコもやめられたよ キスだって今ならキャンディと同じ甘い味だよ」は屈指のドン引き。その彼女の事は忘れてやるんじゃなかったのかよ・・・
アルバムの位置こそは重要だが、正直好きになれない歌詞もあいまって私が槇原の曲の中でトップクラスの苦手な曲に入ってしまう。それを入れてもこのアルバムは名盤であるのだから凄い所である。
(C)
08.オオカミ少年
R&B全開にあふれた聞くたびにハートフルを感じさせるソング。
歌詞は愛というものが分からないオオカミ少年を主人公にしている。所々で遠吠えが聞こえる理由がそれである。
曲調も大変にかっこよく、「somebody tell me」と入るコーラスは特に絶品。
ここから後の4曲の完璧な流れを一旦落ち着かせるために配置した曲だと考えると「revenge」と「オオカミ少年」が入る理由も納得できる。
(B+)
09.THE END OF THE WORLD
AORテイスト、所謂音を重視したクロスオーバー的な音づくりとしっとりとした落ち着いた声が特徴的なサウンドである。
歌詞は不倫を描いたものである。かなり生々しいが、許されない恋とであると同時に切なくなり、それが伝わっていく。「どこかの部屋の窓の明かりが一つ一つ消えていく度に逃げ切れたような気分になる」という歌詞が好き。
このアルバムが名盤である理由が「LOVE LETTER」という曲以上にこれではないかと思う。どこを切り取っても完璧な曲である。
(S+)
10.PAIN
当時としては珍しいライフソングを作っている、陰と陽が激しく刻み込まれている爽やかなポップナンバーが印象的。
歌詞に書かれてある「虹の架け橋」「郵便番号は1から始まる」とあるように、東京での生活が切り取られている。
この曲を聞くと頑張らなきゃなと思えるような主人公と同等の感情移入できるところが槇原の凄い所である。
余談ではあるが、槇原が「Believer Concert」で披露したPAINは圧巻であった。弾き語りで行われた美しいメロディーはこの曲が好きだったら聞いておかないと損である。
(S+)
11.LOVE LETTER
槇原が得意とする片思いのバラード曲。その到達点のひとつ。
歌詞は君に片思いしている主人公が、ラブレターを渡そうとするが渡せられなかった、渡さなかったという切ない歌詞である。
1番ではピアノのみ、因みにこのピアノの伴奏は駅の踏切音を表している。そして2番に入るとバンドテイストとなり、一気に盛り上げる。
ファンの間では高い人気を誇り、コンサートツアーなどでも披露される率が高い。
サビで繰り返される「大好きだ 大好きだ」という歌詞に切なさがにじみ出ている。
何だかんだ歌詞の描写も相まってラブソングとして圧倒的なピークを持っていたと聞いただけでも直ぐにわかると感じる。
(S)
12.まだ見ぬ君へ
片思いソングのもう一つの到達点。今作を飾るED曲である。優しさあふれるポップナンバーが印象的。歌詞は、まだ見ぬ君を思って普通にしている主人公を描いている。
ありとあらゆる片思いソングが溢れている中で、君という存在が確定されていないというのは、発想の天才そのものである。
3rdアルバム「君は僕の宝物」に収録されている「まばたきの間の永遠」に繋がるような演出もまた良しである。
特に「愛のようなものじゃなくて 愛をあげたいから」という歌詞が好き。ただ純真にその見えていない相手にラブを届けたい気持ちが伝わる。
私が「UNDERWEAR」の中で一番好きな曲である。この曲を聞きたいからもう一周するというようなある意味での中毒性あふれた曲でもあるからである。
(SS)
【総評】
これが槇原の頂点だという人が多いのも納得できる曲のラインナップ。
どれも印象的な曲が多く、これまで作ってきた曲でも槇原の新しい境地も見出しているのが印象的。
3rdアルバム「君は僕の宝物」の次にオススメできるアルバムである。
間違いなくどれか一曲は心に残る名曲が見つかるはずだ。
(S+)