アーティスト性を高めるまで・・・
(敬称略)
早見沙織の2ndアルバム「JUNCTION」を聴いた方なら分かるはずだが、前作「Live Love Laugh」と比べアーティスト性がより一層増したのが分かるはずだ。
今回はその前兆とも言えるミニアルバム「live for LIVE」から2ndアルバム「JUNCTION」を以前と同じスタイルでレビューしたいと思う。
まだ、前回のレビューを見ていない方はこちらから・・・
karonsenpai0912.hatenablog.com
では、早速紹介していこうと思う。
live for LIVE
16年12月21日
ライブのために用意しておいた新曲のみを集めたミニアルバム。ライブ盤付属か、通常版として4曲一般販売されている。
ふりだし
王道のポップナンバー。早見沙織の曲は比較的ジャズやAOR、シティ系の曲調が多いため王道ポップは比較的珍しい。
歌詞も「前に進もう!」と王道な勇気を与えてくれる歌詞。特に「上り坂の先の景色怖かったけど 下り坂じゃなくて数え切れない道があると知った」という歌詞が印象的。
自問自答して「なにしてるんだろう」と思った時にふりだしに戻ってしまうという解釈も良い。前に確実に1歩進ませてくれる曲だ
(A+)
Secret
作詞作曲:川崎里美 編曲:大久保薫
幼少期からジャズボーカルをやっていたこともあったことから1stアルバム収録曲「ESCORT」よりもよりジャジーな曲。
こんなにもジャジーな曲が似合うアーティストは数えるほどしかいないのだが、早見沙織はそれを歌い上げている。まさに日頃の賜物といったところだ。
歌詞はあなたに全てを知らせない。だって、知ったら輝きがなくなってしまうからというもの。
ぶっちゃけ歌詞をよく見なければ意味が分からなかったが、ジャズというのはこういうものなのだろう。歌詞よりもボーカル、演奏に着目するナンバーだ。
(A)
3rd single「夢の果てまで」
17年11月8日
夢の果てまで
映画「劇場版はいからさんが通る 前編~紅緒、花の17歳~」のメインテーマとして起用された。
作詞作曲は竹内まりやと非常に豪華。曲調も非常に華やかな昭和歌謡テイストとなっている。「はいからさんが通る」は大正時代を描いた作品ということも理由の一つにつながっている。
また、レコーティングに竹内まりやも一緒だったことも相まっていつもより早見沙織の声も大人っぽく聞こえる。さらに、竹内まりやの指導も甲斐あって早見沙織の声もいつも以上にハツラツに聞こえる。
昔懐かしさを醸し出しながらも、それが逆に新しい。そんなことを感じさせたナンバーである。
(S)
SIDE SEAT TRAVEL
C/W曲は初めての早見沙織による単独の作詞作曲。真夜中の高速道路を走っているかのような王道のアーバン風シティポップ系列の曲となっている。
表題でも編曲に参加した増田武史によると、本当はテンポも少し早くだいぶキャッチーなアレンジになっていた。しかし早見沙織たっての希望でテンポを落としキャッチーさを減らしたとのこと。それでも、メロディーはキャッチーなので確かにこのアレンジは正解だったと思える。
シティポップ系の歌詞は大体がそうだが、言ってしまえば深みがない。しかし、その深みがないからこそメロディーの上質さやアレンジに耳を傾ける事が出来る。
この曲はアルバム未収録だが是非聞いてほしい。早見沙織がアーティストとしての第1歩を踏み出す貴重な1作だ。
(A+)
4th single「Jewelry」
18年3月28日
Jewelry
TVアニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」のEDテーマとして起用された。早見沙織が単独で作詞作曲をしてから、初めてのA面に採用された。
内容は早見沙織自身が言っていたことだが「キラキラウルトラハッピーポップソング」と言っている、まさに本当にその通りなキラキラポップ。
aikoっぽい節回しも効いており、本当にポップ。そのため早見沙織の歌声もかなり可愛い歌い方となっている。
歌詞も比較的女性向けな応援歌。勿論男性が聴いても勇気がもらえる。
「もうこどものままではないけれど 宝物は変わらない」「もう大人に終わりはないけれど 宝物は増えていく」という歌詞が非常に印象的。
私たちの世代(20代30代)はNHKのカードキャプターさくらに非常に夢中だった。その後私たちは年を取り、大人になっていった。そんな人達がこの曲を聴き感動をするのだろう。無論、私も感動した。名曲というほかない。
(S+)
琥珀糖
C/Wはピアノバラード。ピアノアレンジは矢吹香那だが、実際に演奏しているのは早見沙織自身。そのため、コンサートでも弾き語りをしている。
表題曲とは打って変わった落ち着きあるバラード曲で、その為表現も対称的に内面を表している。
ある一面だけを見せて「あの人ってこういう人だよね」と思ってほしくない早見沙織自身の考えを持っており、人は誰しもが多面性をもって生きているというテーマ。
早見沙織の作曲はやはり素晴らしく、その作曲の癖も非常に好み。彼女のアーティストらしさが浮き彫りになる作品と言っても過言ではない。
(B+)
5th single「新しい朝」
18年9月19日
新しい朝
映画「はいからさんが通る 後編~花の東京大ロマン~」のメインテーマとして起用された。この曲も竹内まりやが作詞作曲を提供している。
前回が昭和歌謡だったのに対し、今回は「Denim」以降の壮大なバラードになっている。「人生の扉」のような曲と思えば分かりやすいだろう。
早見沙織をリアルタイムで聴いた曲で、何て大人びた声なんだろうと感じ今ここに至る。そういう意味でこの曲は思い出に残っている。
流石に歌詞は「人生の扉」のような年を意識した歌詞ではないが、十分に今の竹内まりやらしい詩となっている。「哀しみ癒してくれた友達よ はなれてゆく前にありがとうを言わせて」や「人も時代も移り変われば いつか皆過去になる 空だけがそのままで」という歌詞が印象的。人が新しい何かを見るその時に、何かがいなくなってしまう恐怖感を取り除いてくれる。
ここぞとばかりに押してくる泣きメロも相まって結構繰り返し聞いていた。後々振り返っても思い出に残っている曲として記憶しているだろう。
(S)
メトロナイト
C/Wの1曲目は、アシッドジャズが効いたシティポップ。所々のキーボードの音やギターのカッティングなど山下達郎っぽい感じがたまらない。当初は打ち込みの予定だったがベース・ドラムを生音にして、よりグルーヴ感を出しているのも特徴的だ。
歌詞は今までとは違い、突き放した歌詞となっており、非常にSな感じがする。前作のアルバムの歌詞は非常に寄り添っていたりとした歌詞が印象的だったが、こちらもこちらで印象が深い。ここでは降りたくない帰りたくない人はいらないと言ったり、退屈は指先だけで捩じ伏せるとビックリするぐらいに突き放しててそれが面白い。
アーティストとしての早見沙織がここで顕著に出始めた。そういう一作としてとても面白い。
(B+)
SUNNY SIDE TERRACE
C/Wの2曲目は前作「夢の果てまで」のC/Wにあった「SIDE SEAT TRAVEL」の続編となっている曲。
前作が夜だったのが今回は昼をもとに物語が動いている。さぞかし明るい曲だろうと思えば、歌詞はちょっと切ない。
サビの頭で「Love is gonna remake you」とあるが、直訳すると「愛はあなたを作り直すつもりだ」となる。簡単に言えば、失恋したので新しい恋をしたいと言っている。そこで、1番では何があったのか近くのカフェで話そうと提案をし、2番では相手の話を聞き、その人許せない!みたいな会話をしているのだろうか。
しかし、それでも「前に進む貴方は素敵よ」としっかりと寄り添っている。
この歌詞、男女で聞く感じがかなり違うと言うが私はこう聞こえてた。1種の意見として軽く見流してOKだ。明るく聞こえ、表題曲が竹内まりや提供だからか、かなりそこを意識している。カフェミュージックとして好きな一曲だ。
(A)
2nd album「JUNCTION」
18年12月19日
早見沙織の2ndアルバム。今作の一番特筆すべき点は14曲中10曲が作詞作曲をしている点が挙げられる。
Let me hear
作詞作曲編曲:川崎里美
前作と共通して最初のナンバーが今作のリード曲となっている。一応偶然だと早見沙織自身で言っている。
どんなナンバーが最初に来るのだろうとワクワクして聞いたときに、このイントロは驚いた。完全に70年代のアメリカンロックなのだ。 本人曰くクラウチングスタートの曲でこの曲を最初に入れたのだが、ここまで古い(褒め言葉)と逆に清々しい。
早見沙織は60年代~80年代の音楽にルーツがあり、そこを今回は如実に表している。
歌詞もキュート。「あぁ声が聞きたいよ 君の声が好きなのさ」と歌っている。「こっちのほうだよ!」と思わず言いたくなってしまう。
驚異的な中毒性を秘めた曲として最初のナンバーに置いたのはやはり大成功と言える。前作の「NOTE」に続き、最初のナンバーで引き込ませるのは流石と言うしかない。
(A+)
祝福
今作のアルバム曲中で最も印象的だった1曲。
荒々しいが、だけど静か。まるで人の静かな激情を表しているよう。こんなポジティブタイトルなのに聴いているとまるでネガティブに聞こえる錯覚に陥ってしまう。
その前の曲の「白い部屋」もそうだが、ここが1番彼女のアーティストとしての内面性が如実に表れだしている。この2曲は所謂「空間音楽」だ。「白い部屋」で狭い空間を見せ、「祝福」で広大な空間を見せる。その構成もお見事という他ない。
曲は前述通り静かな激情を表しているかのようなピアノとギターが入り混じっている。また、間奏のサンプリングとして「Jesu, Joy of Man's Desiring-主よ、人の望みの喜びよ-」が使われているのも特徴的
好きな曲って訳でもないのだが、このアルバムにおいてこの曲がないと成り立たないというのは必然のことだろう。
(B)
【まとめ】
如何だっただろうか。今回の曲は全てSpotifyなどのサブスクリプションサービスでほぼ全て聴ける。
是非一度でもいいので聞いてほしい。彼女のアーティスト性が如実に表された「JUNCTION」は声優アーティストとしてのアルバムの中で、POPアルバムの中でも屈指の名盤だと私は思う。
また早見沙織の新しいアルバムが出たらこのシングルレビューを再開したいと思う。今回のブログはここまで。ではまた、別のブログで・・・